賃貸の審査が不安なとき——創業期・設立前でも準備できること
2026-08-28 Skrrs 編集部

「設立したばかりの会社でも、事務所は借りられるのだろうか」。創業期の方から、よくいただくご相談です。事業用賃貸には入居審査があり、決算書がない、事業の実績がまだない、という状況は、たしかに審査で不利に働きやすい要素です。
しかし、審査は運試しではありません。貸主が何を不安に感じるのかを理解し、その不安に先回りして答えを用意しておけば、創業期や設立前でも審査に通る道は十分にあります。
この記事では、事業用賃貸の審査で一般的に見られるポイント、創業期・設立前が不利になりやすい理由と、それを補うための準備を整理します。万一審査に通らなかった場合の立て直し方にも触れますので、いま審査を控えて不安な方も、これから物件を探す方も、判断の材料にしていただければと思います。
1. 審査で見られる4つのポイント

事業用賃貸の審査で確認される内容は、貸主や物件によって幅がありますが、大きくは次の4点に整理できます。
| 審査のポイント | 貸主が知りたいこと |
|---|---|
| 事業の実態 | どのような事業を、誰が、どんな計画で行うのか |
| 支払い能力 | 賃料を継続して支払える資金の裏付けがあるか |
| 業種と物件の相性 | 建物の用途や他のテナントと調和する使い方か |
| 連帯保証・保証会社 | 万一の滞納時に、賃料を回収できる備えがあるか |
事業の実態とは、登記や事業内容の説明資料、ウェブサイトなどから見える「その会社が実在し、まっとうに事業を行っているか」という点です。設立前であれば、これから始める事業の計画そのものが判断材料になります。
支払い能力は、決算書や預金残高、事業の収支見込みから判断されます。業種と物件の相性は、飲食や教室のように音・匂い・人の出入りが生じる業種で特に重視されます。そして連帯保証や保証会社は、貸主にとっての最後の安全網です。
あわせて、審査時に求められることの多い書類も押さえておきます。物件によって異なりますが、一般的には次のようなものです。
- 会社案内・登記事項証明書(法人の場合)
- 決算書、または事業計画書
- 代表者の本人確認書類・経歴書
- 預金残高など、資金の裏付けとなる資料
- 連帯保証人や保証会社の利用に関する書類
この4点を裏返すと、「実態が見えて、支払いの裏付けがあり、建物に合った使い方で、万一の備えもある」状態をつくれば、審査の土俵には十分に乗れるということです。
2. 創業期・設立前が不利になりやすい理由
創業期が審査で不利になりやすいのは、事業に問題があるからではありません。判断材料が少ないからです。
貸主は通常、決算書という「過去の実績」で支払い能力を判断します。創業期にはその決算書がありません。事業がこれから軌道に乗るのか、数年後も賃料を払い続けられるのか、貸主の側からは読みようがないのです。
加えて、創業期は先行きの変化も読みにくいと見られがちです。事業が伸びれば手狭になって移転し、想定を下回れば縮小する。どちらに転んでも動きが早いのが創業期だからです。この見え方を踏まえると、「当面はこの物件で腰を据える」という計画を示すことにも意味があります。
貸主にとって、テナントの退去や滞納は大きな損失です。原状回復や次の募集には時間も費用もかかります。だからこそ、判断材料が少ない相手には慎重にならざるを得ません。
なお、設立前の場合は、そもそも法人名義での契約ができないという実務上の論点も加わります。代表者個人での契約や、設立を条件とした契約など進め方はありますが、いずれにしても「個人としての信用」がより重く見られることになります。
ここで大切なのは、「材料がないから不利」なのであって、「創業期だから否決」と決まっているわけではないという点です。つまり、判断材料をこちらから用意すれば、その分だけ状況は変えられます。次の章から、その準備を具体的に見ていきます。
3. 準備①——事業計画で「実態」を見せる

創業期の審査でもっとも効果的な準備は、事業計画書です。決算書という過去の数字がない以上、これからの計画で事業の実態を示すほかないからです。
といっても、金融機関に出すような精緻なものである必要はありません。貸主が知りたいのは、次のような点です。
- どのような事業か(商品・サービス、想定する顧客)
- なぜその事業を始めるのか(代表者の経歴・経験とのつながり)
- 収支の見込み(売上の根拠と、賃料が収支の中で無理のない水準であること)
- 開業までのスケジュール
特に説得力を持つのが、代表者の経歴です。その業界での勤務経験が長い、同じ業種で店長やマネジャーを務めていた、といった経験は、「この人なら事業を続けられそうだ」という判断の根拠になります。経歴書を一枚添えるだけでも、印象は変わります。
数字は、大きく見せる必要はありません。むしろ、控えめな売上見込みでも賃料を払える計画になっていることのほうが、貸主には安心材料になります。
なお、事業計画書に決まった様式はありません。A4で2〜3枚程度に、事業の内容・経歴とのつながり・収支の見込みをまとめれば十分です。分量の多さよりも、賃料が収支の中で無理のない水準だと一目で分かることを優先してください。
事業計画書には、もうひとつの効用があります。書く過程で、賃料が収支に占める割合や、売上が想定を下回った場合の耐久力を、ご自身で確認できることです。審査対策として作った資料が、そのまま経営の点検資料にもなります。
4. 準備②——お金の見せ方と、個人の信用

自己資金は「賃料の何ヶ月分か」で示す
支払い能力の裏付けとして分かりやすいのは、自己資金です。預金残高の写しなどで、開業資金とは別に運転資金の備えがあることを示します。
目安として意識したいのは、「売上がしばらく立たなくても賃料を払い続けられる期間」です。賃料の半年分から1年分程度の資金余力を示せると、貸主の見え方は変わってきます。金額の大小そのものより、「賃料に対して無理のない資金計画か」という比率で見られると考えてください。
融資を受ける予定がある場合は、その状況も伝え方のひとつになります。金融機関に申込み中である、審査に通っているといった事実は、第三者が事業計画を評価している材料として働くことがあります。
代表者個人の信用情報を整えておく
創業期の審査では、会社の実績がない分、代表者個人の信用が会社の信用の代わりに見られます。保証会社の審査では、代表者個人の信用情報が参照されることが一般的です。
具体的には、クレジットカードや携帯電話料金の支払い遅れをなくしておく、税金や公共料金の未納を解消しておく、といった足元の整理です。物件探しを始める前の段階から意識しておきたいポイントです。
これは審査のためだけの話ではありません。創業期は、物件契約のあとにも融資やリース、法人カードなど、個人の信用が問われる場面が続きます。早めに整えておいて損のない領域です。
5. 準備③——保証会社と連帯保証の活用
事業用賃貸では、保証会社の利用を条件とする物件が増えています。保証会社とは、借主が賃料を払えなくなった場合に立て替える会社のことで、借主は保証料を支払って利用します。
創業期にとって、保証会社はむしろ味方です。貸主の「滞納されたらどうしよう」という不安を、保証会社が引き受けてくれるからです。保証会社の審査に通ることが、そのまま貸主への安心材料になります。
連帯保証人についても同様です。代表者本人が会社の連帯保証人になる形は事業用賃貸では一般的で、これに加えて資力のある親族などを立てられる場合は、審査の後押しになることがあります。
保証会社にも審査基準の違いがあります。ひとつの保証会社で通らなくても、別の保証会社では通るということも実務では起こります。どの保証会社を使える物件かは、仲介会社を通じて確認できます。
もうひとつ、見落とされがちな実務があります。保証会社の審査では、申込内容を確認する電話が代表者に入ることがあるという点です。連絡がつかない状態が続くと、それだけで審査が滞ります。申込後の数日間は、知らない番号からの着信にも出られる体制にしておくと、審査の進み方が変わってきます。
なお、保証料は契約時の初期費用に加わります。保証会社を使う前提で資金計画を立てておくと、申込みの段階で慌てずに済みます。金額や料率は保証会社と契約内容によって異なるため、候補物件ごとに確認してください。
6. 審査に通らなかったとき——3段階のリカバリー
準備をしても、審査に通らないことはあります。そのときに大切なのは、感情的にならず、原因の仮説を立てて次に活かすことです。リカバリーは次の3段階で考えます。
| 段階 | やること | 具体例 |
|---|---|---|
| 1. 原因の仮説を立てる | どのポイントで懸念を持たれたかを推測する | 資金面か、業種の相性か、書類の不足か |
| 2. 物件の条件を変える | 審査の傾向が異なる物件に切り替える | 賃料水準を下げる、建物の規模を変える、方針の異なるオーナーの物件にする |
| 3. 伝え方を変える | 同じ内容でも、資料と説明を組み立て直す | 事業計画書の補強、経歴書の追加、資金の裏付け資料の追加 |
審査に通らなかった理由は、開示されないことが多いものです。それでも、申込み時の状況を仲介会社と振り返れば、どこに懸念を持たれた可能性が高いか、仮説は立てられます。
例えばSkrrsでは、審査に通らなかった場合も、申込時の資料と状況を一緒に振り返り、審査の傾向が異なる物件への切り替えや、次の申込みに向けた資料の補強をご提案する、という形をとっています。1件の結果を次の精度に変えることが、遠回りに見えて近道になるからです。
たとえば賃料に対して資金の裏付けが薄かったのであれば、賃料水準を一段下げた物件では通る可能性が十分にあります。業種と建物の相性が理由なら、同業のテナントが入っている建物を狙う方が早道です。1件の結果は、その物件との相性の結果であって、事業そのものの評価ではありません。
また、結果が出る前にできることもあります。申込みの段階で、懸念されそうな点に先回りした補足資料を添えておくことです。たとえば創業期であれば、経歴書と資金の裏付けを最初からそろえて出す。後から求められて出すより、印象は大きく違います。
また、申込書の記載と提出資料の内容がそろっていることも、細かいようで大切なポイントです。申込書の事業内容と事業計画書の記述が食い違っている、資本金の額が登記の記載と異なる、といった小さな不一致は、それだけで否決になるわけではなくても、「書類の精度が低い」という印象につながります。提出前に、書類間の整合を一度見直してみてください。
リカバリーの過程は、仲介会社と共有しながら進めるのが効率的です。過去の申込みでどこに懸念を持たれた可能性があるかという情報は、次の物件選びの精度を直接高める材料になるからです。
7. 審査は「落とすため」のものではない
最後に、審査というものの捉え方についてお伝えしたいことがあります。審査は、借主を落とすための関門ではなく、貸主の不安を消すための確認作業だということです。
貸主の不安は、突き詰めれば「賃料を払い続けてもらえるか」「建物や近隣とトラブルにならないか」「すぐに退去してしまわないか」の3つです。審査書類は、この3つの問いへの回答なのです。
そう捉え直すと、準備の意味も変わってきます。事業計画書は自分を良く見せるための資料ではなく、貸主の問いに誠実に答えるための資料です。不安に先回りして答える姿勢そのものが、信頼につながります。
創業期であることは、変えられません。しかし、貸主の目線に立った準備は、今日からでも始められます。
よくあるご質問
Q. 会社の設立前でも、事務所を借りることはできますか。
可能なケースはあります。設立準備中の場合、代表者個人の名義で契約し、設立後に法人名義へ切り替える方法や、法人設立を条件とした契約などの進め方があります。物件や貸主の方針によって対応は分かれるため、早い段階で仲介会社に状況を伝えて相談するのが近道です。
Q. 決算書がない場合、代わりに何を用意すればよいですか。
一般的には、事業計画書、代表者の経歴書、預金残高など資金の裏付け資料、本人確認書類などを組み合わせます。開業届や設立登記の書類、取引先との契約書や内定している案件の資料など、事業の実態を示せるものがあれば添えると効果的です。
Q. 審査にはどのくらいの期間がかかりますか。
物件や保証会社によって幅がありますが、数日から2週間程度を見込むことが多い印象です。書類の不足があると往復で時間が延びるため、あらかじめ書類一式をそろえてから申し込むことが、期間を読みやすくするいちばんの方法です。入居希望日から逆算して、余裕を持った日程で動くことをおすすめします。
Q. 一度審査に落ちた物件に、もう一度申し込むことはできますか。
再申込み自体が禁じられているわけではありませんが、状況が変わっていなければ結果も変わりにくいのが実情です。資金の裏付けが増えた、連帯保証人を追加できる、事業の実績ができたなど、前回と違う材料を示せるようになってからの再挑戦が現実的です。
Q. 保証会社の審査と貸主の審査は、何が違うのですか。
保証会社の審査は、主に支払い能力と信用情報の確認です。一方、貸主の審査は、業種や使い方が建物に合うか、長く入居してくれそうかといった、数字以外の観点も含みます。両方に通って初めて契約に進める物件が多いため、どちらか一方だけの対策では足りない点に注意が必要です。
まとめ

事業用賃貸の審査で見られるのは、事業の実態、支払い能力、業種と物件の相性、そして万一への備えです。創業期・設立前はこのうち「過去の実績」という材料を欠いているだけで、事業計画・資金の示し方・個人の信用・保証会社の活用によって、材料は自分で補うことができます。
物件探しと審査準備は、別々の作業ではなく並行して進めるものです。候補が見つかってから慌てて書類を作るのではなく、探し始めた日から準備を始める。それが、創業期のテナント探しを確実に前へ進める方法です。
Skrrsでは、創業期・設立前の方のテナント探しについても、審査を見据えた物件選びや書類準備のサポートを含めてご相談を承っています。ご相談は無料です。審査が不安な段階からでも、状況を整理するお手伝いからご一緒します。