テナント探し、自分で探すか仲介に相談するか——2つのルートの違い
2026-08-18 Skrrs 編集部

「まずは自分でポータルサイトを見てみよう」。テナント探しを始めるとき、多くの方がここからスタートします。実際、事業用物件の情報サイトは年々充実しており、自分で探すこと自体は十分に可能な時代になりました。
一方で、探し始めてしばらくすると、別の迷いが生まれます。このまま自分で探し続けてよいのか、それとも仲介会社に相談したほうがよいのか。相談すると費用が余計にかかるのではないか、という不安を持つ方も少なくありません。
この記事では、「自分で探す」「仲介会社に相談する」という2つのルートの違いを、見える情報の範囲・やり取りの相手・費用の3つの面から整理します。どちらか一方だけが正解というものではありません。読み終えたときに、ご自身の状況に合った使い分けを判断できる状態を目指します。
1. テナント探しの2つのルート——まず全体像から
事業用のテナント探しには、大きく分けて2つの進め方があります。ポータルサイトなどを使って自分で物件を探し、掲載元に直接問い合わせる方法。そして、仲介会社に希望条件を伝え、物件の提案を受けながら進める方法です。
- 自分で探す: ポータルサイトで検索し、物件を掲載している会社へ直接問い合わせる
- 仲介会社に相談する: 希望条件を伝え、提案・比較・条件調整のサポートを受けながら進める
この2つは、対立する選択肢のように語られることがありますが、実際には併用しながら進める事業者の方が多いのが実情です。まずはそれぞれの仕組みを正確に知ることが、使い分けの出発点になります。
前提として知っておきたいのは、事業用物件の情報流通は、住居用ほど一元化されていないという点です。住まい探しの感覚でポータルサイトだけを見ていると、市場の見え方に偏りが出ることがあります。この構造の違いが、2つのルートを使い分ける理由になります。
なお、どちらのルートでも、内見・申込み・審査・契約という流れ自体は変わりません。違うのは、その過程を誰と組んで進めるかです。以下では、それぞれのルートで「見える情報の範囲」と「やり取りの相手」がどう変わるのかを、順に見ていきます。
2. 自分で探す場合——見える情報と、やり取りの相手

ポータルサイトに載っている情報の範囲
ポータルサイトに掲載されるのは、賃料や共益費、面積、所在地、写真といった基本情報が中心です。物件の第一印象をつかみ、エリアごとのおおよその相場観を養うには十分な情報量といえます。
一方で、契約条件の細かな部分までは掲載ページから読み取れないことがほとんどです。たとえば保証金の返還条件、原状回復の範囲、入居できる業種の制限、審査の傾向といった情報は、問い合わせて初めて分かることが多いものです。
また、掲載されている物件は「広く募集をかけたい物件」が中心です。事業用物件の場合、後述するように、そもそもポータルサイトに出ない形で動く情報が一定の割合を占めます。ポータルサイトで見えているのは、市場の一部だと考えておくのが実務的です。
さらに、掲載情報の鮮度にも注意が必要です。事業用物件は住居用に比べて情報の動きが読みにくく、成約済みの物件が掲載されたまま残っていることがあります。問い合わせて初めて「実はもう決まっています」と分かるケースは珍しくなく、見えている物件数がそのまま選べる物件数とは限らないのです。
もうひとつ、図面や写真と現地の印象には差が出やすいことも押さえておきたい点です。天井高、電源容量、空調の方式、搬入経路などは、事業の使い勝手を左右するのに、掲載情報だけでは判断しづらい項目です。候補を絞る段階では、内見を前提に考える必要があります。
問い合わせると、誰とやり取りすることになるか
掲載物件に問い合わせると、多くの場合、その物件を掲載しているオーナー側の仲介会社とやり取りすることになります。
オーナー側の仲介会社は、その物件を熟知している頼れる存在です。ただし立場としては、オーナーから募集の依頼を受けている側です。借主であるあなたの希望条件を掘り下げ、他の物件と比較しながら助言する役割まで担うとは限りません。
これは、どちらが良い悪いという話ではなく、役割の違いです。物件を紹介する立場と、借り手の希望を形にする立場では、同じ質問への答え方も変わってきます。「この物件の弱点はどこですか」という質問に率直な答えを期待できる相手かどうか、という視点で考えると分かりやすいかもしれません。
この2つの立場は、実務では「元付け」「客付け」という言葉で区別されています。オーナーから募集の依頼を受けているのが元付けの会社、借主の側に立って物件を探すのが客付けの会社です。同じ「仲介会社」という名前でも、どちらの依頼を受けて動いているかで役割が変わる——この構造を知っておくだけで、問い合わせ先とのやり取りは格段に理解しやすくなります。
また、複数の物件を比較したい場合は、物件ごとに別々の会社とやり取りすることになります。内見の日程調整、条件の確認、書類の準備を、それぞれの窓口と個別に進める手間は、想像以上に大きいものです。
3. 仲介会社に相談する場合——何が変わるのか

触れられる情報の範囲が広がる
借主側の窓口として仲介会社に相談すると、まず変わるのは情報の範囲です。ポータルサイトに掲載される前の物件、退去予定が出たばかりの区画、オーナーの意向で表に出ていない募集など、水面下の情報に触れられる可能性が生まれます。
事業用物件の実務では、条件の良い物件ほど公開前に申込みが入って決まってしまう傾向があります。表に出る前の情報に接点を持てるかどうかは、選択肢の数に直結します。
また、希望条件を伝えておけば、新しく出てきた情報が届くようになります。自分で検索する場合は「探しに行く」動きの繰り返しですが、相談しておけば「情報が届く」状態を並行して持てます。この差は、探す期間が長くなるほど効いてきます。
条件のすり合わせを一緒に進められる
もうひとつの違いは、条件の整理を手伝ってもらえることです。「駅から近いほうがいい」「広さはこれくらい」という漠然とした希望を、予算や事業計画と突き合わせながら、市場に実在する物件の条件へと翻訳していく作業です。
希望条件は、探し始めた時点では本人にも完全には見えていないことが多いものです。対話を通じて「譲れない条件」と「譲れる条件」の線引きが明確になると、同じ物件情報でも見え方が変わってきます。
複数の物件を横並びで比較できる
仲介会社を通すと、複数の候補物件を同じ土俵で比較できます。賃料だけでなく、初期費用の総額、契約形態、入居可能時期、原状回復の条件などを見比べながら、ひとつの窓口で内見の段取りや条件確認を進められます。
比較の軸をそろえて検討できることは、物件選びの精度に直結します。1件ずつ別の窓口とやり取りしていると、条件の違いがどうしても見えにくくなるためです。
さらに、申込みから契約までの過程でも違いが出ます。賃料や契約期間、入居時期といった条件の調整、申込書類の準備、契約書の読み合わせなど、初めての方がつまずきやすい場面を、借主側の目線で一緒に進められることは、相談するルートの実務的な価値です。
4. 費用の誤解——「自分で探せばタダ」とは限らない

ここが、もっとも誤解の多いポイントです。「仲介会社に相談すると手数料がかかる。自分で探せばかからない」と考えている方は少なくありません。
しかし実務では、ポータルサイト経由で直接問い合わせた場合でも、契約時にはその物件を扱う仲介会社が手続きに入り、仲介手数料が発生する形が一般的です。つまり、どちらのルートで探しても、仲介手数料は基本的に発生します。
これは、募集にかかる実務を仲介会社が担っている以上、契約の手続きにも宅地建物取引業の免許を持つ会社が関与するのが通常の形だからです。誰にも相談せずに自分で探した場合でも、契約の場面では仲介会社が介在し、その対価が発生する。この構造を知っておくと、費用の考え方が変わります。
違いが出るのは、手数料の有無ではなく「その費用で、誰が自分の側に立ってくれるか」です。同じように費用が発生するのであれば、借主の立場で情報を集め、条件のすり合わせに付き合ってくれる相手がいるかどうかは、大きな差になります。
5. 両方使う折衷案——実務ではこの形が多い
実際のテナント探しでは、2つのルートを組み合わせる進め方が現実的です。たとえば次のような流れです。
- ポータルサイトで市場を眺め、相場観と自分の希望を言語化する
- 気になった物件があれば、その情報を仲介会社に伝えて詳細を確認する
- 並行して、似た条件の非公開情報や新着情報の提案を受ける
ポータルサイトは、相場観を養い、希望を言葉にするための道具として優れています。そこで見つけた「気になる物件」を仲介会社に伝えれば、その物件の詳細確認と、似た条件の物件の提案を同時に受けられます。
「この物件、どう思いますか」と率直に聞ける相手をひとり持っておく。それだけで、自分で探す作業そのものの質も上がっていきます。自分の目とプロの目、両方を使える体制が、結果的に選択肢をいちばん広く保てる形です。
併用を始める手順も簡単です。まず、いま使っているポータルサイトの検索条件をそのまま仲介会社に伝えます。次に、これまで見た中で「良いと思った物件」と「見送った物件」を数件ずつ挙げ、それぞれの理由を添えます。この2つの情報だけで、仲介会社側はあなたの基準をかなり正確につかめるため、初回の提案から精度が上がります。
併用する際の注意点はひとつだけです。同じ物件について、複数の窓口から同時に問い合わせないこと。オーナー側から見ると、同じ人が別々の経路から現れることになり、心証や手続きの面で不利益につながりかねません。窓口の整理だけ意識しておけば、併用は安心して進められます。
6. 使い分けの判断軸

最後に、どちらのルートに軸足を置くかを考えるための整理です。ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
| 状況 | 向いている進め方 |
|---|---|
| 探し始めたばかりで、相場観をつかみたい | まずはポータルサイトで自分で見てみる |
| 希望条件がまだ言葉になっていない | 仲介会社との対話で条件を整理する |
| 移転期限が決まっていて、時間が限られている | 仲介会社に相談し、比較と段取りを進めてもらう |
| 気になる物件がすでにある | その物件情報を仲介会社に伝えて詳細を確認する |
| 業種や設備の条件が特殊 | 水面下の情報も含めて仲介会社に探索を依頼する |
判断に迷う場合は、いま足りないのが「情報」なのか「時間」なのかで考えると整理しやすくなります。情報が足りないなら相談を早め、時間に余裕があるなら自分で探す期間を設ける、という使い分けです。
もうひとつの判断材料は、検討する物件の数です。1〜2件を深く検討したい状況なら、掲載元への直接問い合わせでも進めやすいでしょう。一方、5件、10件と比較しながら絞り込みたい状況では、窓口がひとつにまとまっている方が、条件の整理も内見の日程調整も速く進みます。検討の規模で使い分ける、という視点です。
また、事業のフェーズによっても向き不向きは変わります。創業期で審査や書類に不安がある場合や、拡張移転で現オフィスの解約時期との調整が要る場合は、段取り全体を見てくれる相手がいるほうが、抜け漏れを防ぎやすくなります。
そして、どちらのルートを選んでも、最終的に判断するのはご自身です。仲介会社の提案は判断材料であって、答えそのものではありません。材料を増やし、比較の軸をそろえるための道具として、2つのルートを使い分けてください。
よくあるご質問
Q. ポータルサイトで見つけた物件を、仲介会社に持ち込んでもよいのでしょうか。
問題ありません。実務でもよくある進め方です。物件の掲載情報を仲介会社に伝えれば、取り扱いの可否を確認した上で、詳細条件の確認や内見の調整を進められます。あわせて、似た条件の他の物件と比較する材料も得られるため、その物件が本当に良い選択かどうかの検証にもなります。
Q. 仲介会社を通さず、オーナーと直接契約すれば手数料はかからないのではないですか。
オーナーと直接契約できる物件も存在しますが、事業用賃貸の実務では少数派です。募集をオーナー自身が行っている場合に限られ、契約書の作成や条件交渉もご自身で進めることになります。契約条件の確認を第三者の目なしに行うことになるため、費用面だけで判断しない方がよい選択肢です。
Q. 複数の仲介会社に同時に相談してもよいですか。
差し支えありません。ただし、同じ物件に別々の会社経由で問い合わせると、オーナー側の心証や手続きの面で混乱が生じることがあります。相談先を広げる場合も、申込みの窓口はひとつに絞るのが実務的です。複数社に相談していること自体を各社に伝えておくと、重複のリスクはさらに下げられます。
Q. 相談だけして契約に至らなかった場合、費用はかかりますか。
仲介会社の多くは、ご相談自体には費用を設けておらず、仲介手数料は物件の契約が成立した際に、初期費用の一部として発生する形をとっています。この形であれば、相談の結果「今回は動かない」という判断になっても費用は発生しません。ただし会社によって扱いが異なる場合もあるため、相談を始める段階で「費用が発生するのはどの時点か」を確認しておくと安心です。
Q. まだ移転するか決めていない段階で相談するのは早すぎますか。
早すぎることはありません。移転するかどうかの判断材料として、いまの市場でどのような物件がどのような条件で出ているかを知ることには意味があります。検討の結果「移転しない」という結論になっても、それはそれで有益な判断です。
まとめ
自分で探すルートと仲介会社に相談するルートは、優劣の問題ではなく、見える情報の範囲とやり取りの相手が異なる、性質の違う道具です。そして費用面では、どちらのルートでも仲介手数料は基本的に発生します。だからこそ「誰が自分の側に立つか」で考えることに意味があります。
ポータルサイトで自分の目を養いながら、相談できる相手を持って水面下の情報にも接点をつくる。この両輪が、選択肢をいちばん広く保つ進め方だと考えています。探し方に唯一の正解はありませんが、構造を知らないまま進めるのと、知った上で選ぶのとでは、結果の納得感が違います。
Skrrsは、オフィス・店舗・倉庫など事業用物件の仲介を行う、借主側に立つ相談窓口です。ポータルサイトで見つけた物件の持ち込みも歓迎しています。探し始めたばかりの段階でも、条件整理からご一緒しますので、お気軽にご相談ください。