内見で見るべきポイント——事務所・店舗の現地チェックリスト
2026-09-23 Skrrs 編集部

図面と写真だけで決めた店舗が、ふたを開けてみたら想像と違った——。天井が思ったより低い、搬入口が狭い、夜になると人通りが途絶える。こうした「図面には載っていない情報」こそ、内見で確かめるべきものです。
内見は、物件を「見学する場」ではなく「確かめる場」です。見るべき点をあらかじめ決めて臨むかどうかで、同じ一時間から得られる情報量は大きく変わります。
本記事では、事務所・店舗の内見で確かめたいポイントを、建物・室内・設備・周辺環境・搬入経路の順にチェックリスト形式で整理します。内見の場で仲介会社へ聞いておきたい質問リストも付けました。
1. 内見前の準備——目的を決めてから行く
内見の成果は、準備で決まります。まず、自社にとって「譲れない条件」と「妥協できる条件」を書き出しておきます。判断軸のないまま現地に行くと、第一印象のよい物件に引っ張られがちです。
持ち物は、メジャー(レーザー距離計があると便利です)、図面のコピー、筆記用具、そしてスマートフォン。写真と動画は、後から複数の物件を比較する際の記憶の補助になります。
- 譲れない条件と妥協できる条件を書き出しておく
- 現地で測りたい箇所に、図面上で印を付けておく
- レイアウト案(席数・執務席数・什器の配置)のラフを持参する
- できれば複数人で行き、見る場所の役割分担を決めておく
内見の日程には、少しだけ戦略があります。晴れた日中は、どの物件もよく見えるものです。可能であれば、雨の日や夕方以降の内見も組み合わせると、雨漏りの跡や共用部の照明の暗さなど、条件の悪いときの姿を確かめられます。
同行者の目も有効です。店舗であれば、現場に立つ店長候補と経営者では、気になる箇所が異なります。内装を予定している場合は、早い段階から工事の分かる人に同行してもらうと、「やりたい内装が物理的に可能か」をその場で確かめられます。
内見の予約時には、図面の最新版と募集条件の詳細を先にもらっておきます。現地で初めて図面を見ると、限られた時間が読み取りに費やされてしまいます。事前に目を通し、疑問点に印を付けてから臨むのが理想です。
2. 建物の状態は、共用部に表れる

室内より先に、建物の外観と共用部を見ます。管理の状態は、共用部に正直に表れるからです。
エントランスの清掃状況、ゴミ置き場の整理、掲示板の貼り紙の鮮度、照明の球切れが放置されていないか。こうした細部は、管理会社やオーナーが建物にどれだけ手をかけているかを映します。
外壁のひび割れや雨だれの跡、エレベーターの点検表示も確かめておきたいポイントです。管理が行き届いていない建物では、入居後の不具合対応も遅れがちになる、という見方ができます。
もう一つ見ておきたいのが、入居中の他テナントの様子です。フロア案内板の空き具合、各テナントの業種と営業時間。空きが目立つ建物には理由があることが多く、他テナントの業種は、来訪者の層や共用部の使われ方にも影響します。
共用部は、自社のお客さまが通る場所でもあります。エントランスからエレベーター、廊下を経て自社の入口まで、来訪者の目線で歩いてみます。案内表示は分かりやすいか、迷わずたどり着けるか。オフィスでも店舗でも、共用部の印象は自社の印象の一部になります。
3. 室内——図面に載らない立体情報を測る

図面の数字と現地の体感は、しばしばずれます。同じ面積でも、天井の高さや窓の大きさ、柱の位置によって、広く感じる区画と狭く感じる区画があります。数字は図面で、体感は現地で、と役割を分けて確かめるのが基本です。
- 天井高——圧迫感と空調効率に影響します。店舗では内装デザインの自由度も左右します
- 柱と梁——図面上は小さく見えても、現地ではレイアウトの制約になります。梁下の高さも測ります
- 床——OAフロアかどうか、床荷重はどの程度か。重量物を置く予定があるなら特に確認します
- 日当たりと窓——執務環境や商品の日焼けに影響します。方角と隣接建物との距離を見ます
- 空調——個別空調かセントラル空調か。稼働時間の制限や設備の年式も確かめます
採寸は「什器が置けるか」だけでなく、「人が快適に動けるか」まで含めて考えます。通路の幅、扉の開く方向、窓からの距離。レイアウト案のラフを片手に、主要な寸法を図面に書き込んでいくと、帰社後の検討が具体的になります。
空調は特に見落とされやすい項目です。セントラル空調の建物では、夜間や休日の稼働に追加費用がかかる場合があり、営業時間の長い業態では固定費に響いてきます。設備の年式が古い場合は、故障時の負担区分もあわせて確認しておきます。
壁や天井の染みも見ておきたいポイントです。雨漏りや配管からの漏水の跡である可能性があり、見つけた場合は原因と補修の履歴を仲介会社経由で確かめます。日当たりは時間帯で変わるため、内見した時刻を記録しておくと、後の比較に役立ちます。
4. 設備——電気・水・ガス・通信の容量

内装工事の見積もりに大きく影響するのが、インフラ設備の容量です。足りない場合の増設工事は、金額も工期も想定を超えがちです。
- 電気容量——現状の容量と増設の可否。飲食店や機器の多いオフィスでは特に重要です
- 給排水——給水管・排水管の位置と径。水まわりを増やす計画があるなら要確認です
- ガス——都市ガスの引き込みの有無と容量。飲食では業態が成立するかどうかに関わります
- 通信——光回線の引き込み状況と、複数の回線事業者に対応しているか
電気容量は、業態によっては入居の可否そのものを分ける項目です。厨房機器の多い飲食店、サーバーや機材の多いオフィスでは、現状の容量で足りるのか、増設するなら費用と工期はどの程度かを、内装計画とあわせて早めに確かめておきます。給排水も同様に、配管の経路によって水まわりの移設の可否が変わるため、図面と現地の両方で確かめたい項目です。
通信は、開通までの時間も確認しておきたい項目です。建物への引き込みがない場合、手続きと工事に時間がかかることがあり、入居日に間に合わないと業務に直結します。利用したい回線事業者が決まっているなら、対応の可否を早めに確かめておきます。
5. 周辺環境——曜日と時間帯を変えて歩く
店舗にとって、周辺環境は物件そのものと同じくらい重要です。そして周辺環境は、訪れる曜日と時間帯によって表情を変えます。
平日の昼に人通りが多くても、夜や週末は閑散とする立地もあります。想定する営業時間帯に合わせて、できれば平日と週末、昼と夜の複数回、現地を歩いてみることをおすすめします。想定する主要な客層がその立地を実際に歩いているかどうかは、売上の前提そのものになります。
- 人通り——量だけでなく、歩く速さと客層(通勤者か、買い物客か)を見る
- 騒音・におい——幹線道路や線路、近隣の飲食店の排気などの影響を確かめる
- 近隣の業種——競合の有無と、客層を共有できる店があるかを見る
- 夜の雰囲気——照明の量や治安の印象。従業員の帰宅動線としても確認する
騒音は、窓を開けた状態と閉めた状態の両方で確かめます。内見時は窓が閉まっていることが多く、換気のために窓を開ける使い方を想定しているなら、開けたときの音量が実態に近いからです。
店舗の場合は、最寄り駅からの道のりを実際に歩いてみることもおすすめします。距離の数字以上に、坂や信号、道の分かりやすさが体感の距離を左右します。お客さまと同じ経路を歩いてみて、案内のしやすさを確かめておきます。
事務所の場合も、周辺環境の確認は無駄になりません。従業員の昼食の選択肢、銀行や郵便局への距離、来客時に使える駐車場の有無。日々の細かな利便性は、働く人の満足度に静かに効いてきます。
6. 搬入経路——入らなければ始まらない

見落とすと影響の大きいのが搬入経路です。什器や設備が搬入できなかった、というトラブルは実際に起こります。
エレベーターは、かごの間口・奥行き・高さと積載量を測ります。大型の什器や冷蔵設備は、かごに載らなければ階段での手上げとなり、費用が別にかかります。階段の幅と踊り場の寸法も見ておきます。
オフィスの場合も、複合機や大型の会議テーブルなど、意外と大きな荷物があります。現在の拠点で最も大きな什器の寸法を控えておき、内見時にエレベーターと通路の寸法と突き合わせる、という手順にしておくと確実です。
建物の前面道路も重要です。トラックを停められるか、時間帯による駐停車の制限はないか、荷下ろしからエントランスまでの動線に段差はないか。開業時だけでなく、日々の納品にも関わるポイントです。
搬入できる時間帯や共用部の養生など、建物側のルールも確かめておきたい点です。搬入の時間が限られていると、開業準備や引越しの段取りに影響します。居抜きで設備を引き継ぐ場合も、搬出の経路は確認しておきます。将来の入替えや修理の際に、大型の設備を出し入れできるかどうかに関わるためです。
7. 業種別の追加チェックと、仲介会社への質問リスト
ここまでの共通項目に加えて、業種ごとに確かめたい項目があります。
| 業種 | 追加で確かめたいポイント |
|---|---|
| 飲食店 | 排気ダクトの経路と能力、グリストラップの有無、ガス容量、近隣への臭気・煙の影響 |
| 物販店 | 間口の広さと視認性、ファサードの造作の可否、在庫置き場の確保 |
| 事務所 | OAフロアの有無、空調の系統分け、会議室を作れる区画割り、入退館の方式 |
| 教室・スクール | 防音性、避難経路、送迎時の待機スペース、看板の掲出位置 |
業種別の項目は、内装工事の実現性に直結するものが中心です。とりわけ飲食店の排気の経路は、後から変更しにくく、近隣との関係にも関わるため、内見の段階で丁寧に確かめておきたい項目です。
最後に、内見の場で仲介会社へ聞いておきたい質問を挙げます。その場で答えが出ないものは、持ち帰りでの確認を依頼します。
- 前のテナントの業種と、退去の理由
- 入居中の他テナントの業種と営業時間
- 工事区分(A・B・C工事)の範囲と、貸主指定業者の有無
- 看板を掲出できる位置と費用
- ゴミ出しのルールと費用
- 空調・給湯など設備が故障した場合の負担区分
- 賃料以外にかかる費用(共益費・管理費に含まれる範囲)
- 入居できる時期と、内装工事に着手できる時期
質問への答えは、口頭のままにせず、メールなどの文字で受け取っておくと、社内での共有と後日の確認が楽になります。複数の物件を比較する際にも、同じ質問リストで並べると判断がぶれにくくなります。
8. 内見後の整理——記憶が新しいうちに比較の形にする
内見は、現地を出た後の整理までが一区切りです。人の記憶は思っている以上に早く混ざります。特に一日に複数件を見た日は、どの物件の天井が低かったのか、どの建物の共用部が暗かったのか、翌日にはあいまいになりがちです。
現地を出たら、その場で数分、印象のメモを残します。良かった点と気になった点を三つずつ、そして「譲れない条件」に照らした違和感の有無。この短いメモが、後の比較の質を大きく左右します。
社内で共有する際は、評価の軸を先にそろえます。縦に物件名、横に譲れない条件と妥協できる条件を並べた一枚の表を作り、内見のたびに埋めていく形にすると、担当者ごとの印象のばらつきに左右されにくくなります。写真と動画は物件ごとのフォルダに分け、撮影した時刻と天気も添えておくと、条件の違いを踏まえて見返せます。
比較の結果、候補が二つ三つに絞れたら、二回目の内見で確かめる項目をあらかじめ決めてから臨みます。初回に確かめきれなかった点、質問リストの回答と現地の突き合わせ、時間帯を変えた周辺環境の確認。二回目は「見る」内見ではなく「決める」内見です。
なお、見送った物件の記録も捨てずに残しておきます。「なぜ見送ったか」の記録は、自社の条件の輪郭をはっきりさせ、次の物件探しの精度を上げてくれます。
よくあるご質問
Q. 内見は一回で決めるべきでしょうか。
一回で決める必要はありません。特に店舗は、曜日や時間帯で周辺環境が変わるため、時間を変えて二回以上見る価値があります。二回目は初回に確かめきれなかった点に絞って見る、という使い分けが効率的です。ただし人気の物件は他の希望者との兼ね合いもあるため、判断の期限は仲介会社に確かめておくと安心です。
Q. 内見にはどのくらい時間がかかりますか。
物件の規模にもよりますが、一件あたり30分から1時間程度を見ておくとよいでしょう。採寸や写真撮影、周辺の下見まで含めると、余裕を持った時間配分をおすすめします。移動を含めて半日で2〜3件程度が目安です。一日に詰め込みすぎると印象が混ざるため、物件ごとに比較メモをその場で書くことをおすすめします。
Q. 写真撮影や採寸はしてもよいのでしょうか。
多くの場合は可能ですが、物件によっては制限があるため、内見の冒頭で仲介会社に確認しておくとスムーズです。撮影した写真や採寸のデータは、社内での検討やレイアウト設計の材料になります。動画は、天井や床、共用部までを一筆書きで撮っておくと、後から見返すときに位置関係が分かりやすくなります。
Q. 居抜き物件の内見では何に注意すればよいですか。
設備が「使える状態か」の見極めが中心になります。厨房機器や空調の年式と稼働状況、リース品が含まれていないか、造作の譲渡範囲と金額を確かめます。設備の状態は外観だけでは分かりにくいため、動作確認や専門業者の同行も検討する価値があります。
Q. 内見に同行してもらうことはできますか。
はい、内見への同行は多くの仲介会社が行っています。例えばSkrrsでは、担当者が内見に同行し、その場で分かる範囲の回答と持ち帰り事項の確認をお引き受けし、内装をご検討の場合は工事の目線での見立てもあわせてお伝えする形をとっています。同行者には遠慮なく採寸や撮影を頼み、疑問はその場でぶつけてみてください。回答の速さと中身は、仲介会社を見極める材料にもなります。
まとめ
内見は、図面と写真では分からない情報を確かめに行く場です。建物と共用部、室内の立体情報、設備の容量、周辺環境、搬入経路——見るべき場所を決めて臨めば、一回の内見から得られる情報は格段に増えます。
そして、確かめきれなかったことをそのままにしないこと。疑問は仲介会社への質問リストにして、答えがそろってから判断に進む。この手順が、入居後の「こんなはずでは」を減らします。チェックの結果は、記憶が新しいその日のうちにメモへまとめておくと確実です。
Skrrsでは、物件のご紹介から内見の同行、内装のご相談までを一貫してお手伝いしています。本記事のチェックリストを持って、まずはお気軽に内見からお試しください。ご相談は無料です。