「かかりつけの不動産会社」を持つという選択
2026-08-21 Skrrs 編集部

「今の事務所、そろそろ手狭かもしれない」。そう感じながらも、誰に相談すればよいか分からず、日々の業務に追われて後回しにしている。経営者の方の拠点の悩みは、そんな形で放置されがちです。
体調の変化をまず相談できる「かかりつけ医」がいるように、拠点や不動産のことをまず相談できる相手を平時から持っておく。本記事では、この「かかりつけの不動産会社」という考え方をご紹介します。
単発の取引で終わる関係と何が違うのか、かかりつけがいると具体的にどのような場面で助かるのか、そしてどのような基準で選べばよいのか。順を追って整理していきます。
1. 「かかりつけ医」と同じ構図が、不動産にもある
体調に不安があるとき、いきなり大きな病院に行く方は多くありません。まずかかりつけ医に相談し、状況を整理してもらってから次の一手を考える。この流れが機能するのは、かかりつけ医が患者の体質や既往歴を知っているからです。
拠点や不動産も、構図は同じです。移転や増床は多くの会社にとって数年に一度の出来事で、経験が社内に蓄積されにくい領域です。いざ物件が要るとなってから不動産会社を探し始めると、会社の事業内容や希望条件を一から説明するところから始まります。
一方で、平時から会社の状況を知っている相談相手がいれば、「その規模なら、このエリアでこういう選択肢がありますね」という会話が最初の一回から成立します。この差は、時間に追われる局面ほど大きく効いてきます。
「不動産会社は物件を借りるときに行くところ」という認識は自然なものです。ただ、事業を続けるかぎり拠点の論点はなくならず、更新・増床・退去・社宅と、形を変えて繰り返し現れます。点ではなく線で付き合う相手と捉え直すと、選び方も変わってきます。
経営者の時間は有限です。拠点の検討に慣れていない担当者が情報収集から始めると、本業の時間が少しずつ削られていきます。「まず誰に聞くか」が決まっているだけで、初動の負荷は大きく下がります。
また、相談相手が決まっていると、判断の先送りが減ります。「調べなければ」と思いながら動けない状態は、それ自体が経営の負担です。聞けば数日で答えが返ってくる相手がいることは、意思決定の速さに直結します。
2. 単発の取引で終わる関係と、続く関係の違い

不動産会社との関係には、大きく二つの形があります。物件を探すときだけ接点を持ち、契約が済んだら終わる「単発型」と、取引の有無にかかわらず接点が続く「かかりつけ型」です。
単発型が悪いわけではありません。条件が明確で、比較検討の時間も十分にあるなら、単発の依頼で足りる場面も多くあります。たとえば、出店エリアが一つの駅前に決まっていて、候補もほぼ絞れているような場合です。逆に、条件がまだ固まっていない、あるいは今後も拠点の論点が続きそうな場合は、関係が続く相手を持つ意味が大きくなります。
違いが出るのは、前提を共有できているかどうかです。かかりつけ型では、事業の内容、社員数の推移、過去に検討した物件、意思決定者の好みといった文脈が蓄積されています。相談の立ち上がりが速く、提案の精度も上がりやすくなります。
もう一つの違いは、情報の流れる向きです。単発型では、こちらから依頼して初めて情報が動き出します。かかりつけ型では、「以前うかがった条件に近い物件が出ました」と、先方から声がかかることがあります。事業用の物件情報には、広く募集広告に出る前に動くものも少なくないため、この差は思いのほか大きいものです。
| 観点 | 単発型の関係 | かかりつけ型の関係 |
|---|---|---|
| 相談の起点 | 物件が要るとなってから | 「そろそろ手狭かも」の段階から |
| 前提の共有 | 毎回一から説明 | 事業や好みを把握済み |
| 提案の精度 | 条件表に沿った紹介が中心 | 背景を踏まえた提案がしやすい |
| 情報の流れ | 依頼して初めて動く | 先方から声がかかることもある |
| 急ぎの対応 | 立ち上がりに時間がかかりがち | 状況把握済みのため動き出しが速い |
| 契約後の関係 | 基本的に終了 | 更新・増床・退去まで続く |
3. かかりつけがいると変わる、四つの場面

かかりつけの価値が具体的に表れるのは、たとえば次のような場面です。いずれも「時間がない」「社内に経験がない」という二つの制約が重なりやすい局面です。
急な増床・縮小
採用が想定より進んだ、大口の受注で人員が増える、逆に一部門を縮小する。事業のスピードに拠点が追いつかない場面は、ある日突然やってきます。会社の状況を知っている相手なら、要件整理の会話を飛ばして物件の話から始められます。
また、同じビル内での増床や、近隣での分室の確保といった選択肢は、建物や貸主の事情を知っている相手ほど提案しやすい領域です。
退去・原状回復の協議
退去時には、原状回復の範囲や工事区分をめぐって貸主側との調整が発生します。契約書と現況を踏まえた整理を、借りる側の立場で一緒に考えてくれる相手がいるかどうかで、負担感は変わってきます。
退去は、次の拠点の契約と時期を合わせる必要があり、段取りが複雑になりがちです。全体の工程を一緒に組み立てられる相手がいると、抜け漏れを防ぎやすくなります。
契約更新のタイミング
更新は、条件を見直す数少ない機会です。周辺の募集状況を踏まえて更新条件をどう考えるか、あるいは移転と比較するとどうか。判断材料を並べてくれる相手がいると、「気づいたら深く考えないまま更新していた」という事態を避けやすくなります。
更新の検討は、期日の半年から一年前に始めるのが実務的です。かかりつけがいれば、このタイミングで先方から声をかけてもらう、という関係も作れます。
社宅の手配
採用や転勤にともなう社宅の手配は、拠点の話と地続きです。事業用と住宅の両方に対応できる会社をかかりつけにしておくと、窓口を一本化でき、担当者の手間が減ります。
特に採用競争の激しい業種では、住宅面のサポートが働く場としての魅力につながることもあり、拠点と社宅をあわせて設計する視点が役立ちます。
4. かかりつけを選ぶ、四つの基準
では、どのような会社をかかりつけにすればよいのでしょうか。実務目線では、次の四つを見ることをおすすめします。
- レスポンスの速さ——問い合わせへの一次回答が早いか。平時に遅い相手は、急ぎの場面ではさらに遅くなりがちです
- 事業用の専門性——オフィスや店舗の契約慣行、工事区分、原状回復といった事業用特有の論点を語れるか
- 借りる側の立場に立つか——貸主の事情だけでなく、借りる側の交渉材料を一緒に考えてくれるか
- 規模で対応を変えないか——小さな相談や少人数の事務所探しでも、対応の質が落ちないか
四つに共通するのは、「取引が小さいときの振る舞い」を見るという視点です。大きな案件で丁寧なのはある意味で当然のこと。差が出るのは、小さな相談への向き合い方です。
専門性の見極めには、こちらの質問への答え方を見るのが有効です。たとえば「原状回復の工事区分はどうなりそうか」と聞いたとき、一般論で終わらせず、その物件・その契約ではどうなるかまで踏み込んで答えようとするかどうか。回答の解像度に、経験の差は表れます。
また、借りる側の立場に立つかどうかは、デメリットの説明の仕方に表れます。物件のよい点だけでなく、懸念点や向いていない使い方まで先回りして説明してくれる相手は、長い付き合いに向いています。
なお、四つの基準は一度の面談だけで見極めきれるものではありません。小さな相談を一つ投げてみて、返答の速さと中身を見る。この「試しに聞いてみる」が、実務上いちばん確実な見極め方です。
5. 平時の付き合い方——「そろそろ手狭かも」で相談してよい

かかりつけの関係は、大きな依頼から始まるとは限りません。「そろそろ手狭になってきた気がする」「更新が一年後にあるが、どう考えればよいか」。この程度の段階で声をかけて構いません。
相談すること自体は依頼ではなく、そのまま様子見という結論になっても差し支えありません。むしろ早い段階で状況を共有しておくと、いざ動くときの立ち上がりが速くなります。
医療でいえば、健康診断のようなものです。年に一度、拠点の現状と今後の見通しを話しておくだけでも、かかりつけ側の理解は深まり、提案の質が変わってきます。
「相談したら営業をかけられるのでは」という心配から、声をかけるのをためらう方もいらっしゃいます。遠慮なく様子見と伝えて構いませんし、それで関係が崩れるような相手であれば、かかりつけには向いていなかったと分かるだけのことです。
また、相談の際は、人員計画やおおまかな予算感など、事業側の情報もある程度共有しておくと提案の精度が上がります。開示しにくい情報まで無理に伝える必要はありませんが、「何のための拠点か」が伝わっているほど、的外れな提案は減っていきます。
逆に、かかりつけ側から定期的に情報が届く関係も有益です。周辺の募集動向や賃料水準の肌感覚といった情報は、すぐに使わなくても、次の判断の下地になります。届いた情報への反応を返しておくと、情報の精度はさらに上がっていきます。
なお、相談の内容が仲介の範囲を超える場合——たとえば法務や税務の判断が関わる場合は、その分野の専門家への確認をご案内します。かかりつけの役割は、すべてを一社で抱え込むことではなく、論点を整理して適切な相談先へつなぐことにもあります。
6. Skrrsの場合——かかりつけとして、こう動きます

ここまで、かかりつけの不動産会社という考え方を一般論として述べてきました。この章では、私たちSkrrsが、かかりつけとしてどう動くのかを具体的にご紹介します。かかりつけ候補の一社を検討する際の、判断材料としてお使いください。
Skrrsは、事業用不動産の総合パートナーとして、三つのサービスを一つの窓口で提供しています。オフィス・店舗・教室・倉庫・工場の事業用賃貸仲介。物件と同じ窓口で工事区分の調整まで行う内装設計・工事。そして、企業様の費用負担なしでご利用いただける従業員向けの住宅仲介・社宅手配です。拠点の話、内装の話、社宅の話が別々の窓口に分かれない——これが、かかりつけとして機能するための土台だと考えています。
ご相談の入り口は、「そろそろ手狭かもしれない」という段階で構いません。まず現状とこれからの見通しをうかがい、いま動くべきか、様子を見るべきかの整理からご一緒します。整理の結果が「当面は現状維持」であれば、それで構いません。物件が必要になった段階では、物件のご提案から条件のすり合わせ、ご契約までを伴走します。
たとえば内見の場では、担当者が同行し、その場で分かる範囲の回答と持ち帰り事項の確認をお引き受けします。内装をご検討の場合は、工事の目線での見立てもその場でお伝えできます。更新や退去の場面では、契約書の整理と段取りづくりをご一緒します。本記事で述べてきた「かかりつけがいると助かる場面」で、実際に隣にいることが私たちの役割です。
そして、ご相談の規模で対応を変えないことをお約束しています。数名の事務所探しも、小さな移転の疑問も、大型の拠点計画と同じ姿勢でお受けします。本記事で述べた「小さな相談への向き合い方」は、私たち自身が最も問われる基準だと考えているからです。対応エリアは東京都・神奈川県・埼玉県が中心で、エリア外のご相談も対応の可否を含めてお答えします。
費用の仕組みも明快です。ご相談は無料。仲介手数料は、物件のご契約が成立した際に、契約時の初期費用の一部として法令の範囲内で申し受けます。あわせて、仲介手数料の半額保証の制度もあります(適用には条件があります。詳細はお問い合わせの際にご確認ください)。
7. かかりつけ関係を機能させる、小さな習慣
最後に、かかりつけの関係を実際に機能させるための、小さな習慣を三つ挙げます。
- 拠点に関する疑問は、ためずにその都度聞く——小さな質問こそ、相手の力量と相性を測る機会になります
- 年に一度、拠点の現状と見通しを共有する——健康診断のつもりで、変化がなくても伝えておきます
- 契約書や図面など拠点関連の資料を一か所にまとめておく——相談のたびに探さずに済み、話が速く進みます
特に資料の整理は効果の大きい習慣です。賃貸借契約書、重要事項説明書、図面や入居時の写真。退去や更新の場面で参照する資料はおおむね決まっているため、まとめておくだけで有事の初動が変わります。
どれも手間はわずかですが、積み重なると「会社のことを分かってくれている相談相手」が育っていきます。かかりつけは見つけるものであると同時に、育てるものでもあります。
よくあるご質問
Q. 物件を探していない段階で相談してもよいのでしょうか。
差し支えありません。むしろ「まだ探していない」段階のご相談こそ、かかりつけの関係の出発点になります。現状の拠点の課題や今後の見通しをうかがい、動くべきタイミングの目安を一緒に整理していきます。具体的な物件のご紹介を無理におすすめすることはありません。
Q. 相談だけで費用はかかりますか。
かかりません。ご相談は無料で、仲介手数料は物件のご契約が成立した際に、契約時の初期費用の一部として法令の範囲内で申し受ける仕組みです。相談や情報収集の段階で費用をいただくことはありません。ご不明な点は、お問い合わせの際にお気軽にご確認ください。
Q. 顧問契約のような継続的な契約が必要になりますか。
不要です。かかりつけといっても、契約や固定費をともなうものではありません。気になることが出てきたときに連絡する、年に一度近況を共有する、といった軽い付き合い方で問題ありません。連絡先を知っていて、状況をある程度共有できている関係、という程度に捉えていただければ十分です。
Q. すでに付き合いのある不動産会社がある場合はどうすればよいですか。
併用して差し支えありません。不動産会社ごとに得意分野や情報源が異なるため、複数の相談先を持つこと自体が判断材料の幅につながります。比較のなかで、相性のよい相手を見極めていくのがよいと考えます。セカンドオピニオンとしてのご相談も歓迎です。
Q. 対応エリアを教えてください。
東京都・神奈川県・埼玉県が主要な対応エリアです。エリア外の拠点についてもご相談いただければ、対応の可否も含めてお答えします。オフィス・店舗・教室・倉庫・工場と、事業用の物件種別は幅広く扱っています。
まとめ
拠点の悩みは、発生頻度が低いわりに、いざ起きると経営への影響が大きい領域です。だからこそ、困ってから相手を探すのではなく、平時から相談できる関係を用意しておく価値があります。移転も増床も退去も、準備の早さがそのまま交渉力になります。相談相手を先に決めておくことは、その準備を平時に済ませておくことでもあります。
選ぶ基準は、レスポンス、事業用の専門性、借りる側の立場に立つこと、そして規模で対応を変えないこと。小さな相談への向き合い方に、その会社の姿勢は表れます。この四つは、実際のやり取りを通じて確かめられるものです。候補が見つかったら、まず小さな相談をひとつ投げてみてください。
Skrrsは、事業用賃貸仲介から内装設計・工事、社宅の手配までを扱う事業用不動産の総合パートナーです。「そろそろ手狭かもしれない」という段階のご相談も歓迎しています。かかりつけの候補のひとつとして、お気軽にお声がけください。